McSS導入企業インタビュー:

TANO経営支援コンサルタンツ様

貸借対照表の将来の数字を見せるために、将来シミュレーションをうまく使う

プロフィール

TANO経営支援コンサルタンツ様
所在地 宮崎県
事業内容 経営支援コンサルティング

 代表 田内 孝司 様

■インタビュー実施:2023年10月

コロナ禍で偏差値が悪化した先に、将来シミュレーションで融資の完済計画を作成

CRD:McSSの中でも特に将来シミュレーション機能について、ご利用のきっかけや問題意識といったところから、お聞かせいただけますか。


田内様:将来シミュレーションは、まずは事業再生の405事業で使っています。金融機関に、財務デューデリジェンスの中の1つとして使ってみせたということですね。McSSの現状診断と同じフォーマットで、評価結果のランクも含めた将来像を見せたいという意図があって、15年計画を作りました。
ちょっと異質な計画の作り方でして、要は、借りたお金を完済する計画です。本業を立て直して黒字化させていきますという計画の立て方ではなくて、この10年ないし15年間で、借りたお金を完済するために、どのようなビジネスをするのかという計画を作りました。
経産省の事業再構築補助金にも通算で6件採択されており、そちらの申請にも将来シミュレーションを活用しています。同じような案件は、コロナが収束して今後ますます加速するはずで、事業再生計画はこれから非常にクローズアップされると思っています。



CRD:確かに、そういったニーズは今後全国的に広がっていく可能性が高いですね。


田内様:将来シミュレーションの用途を俯瞰すると、まずはこれから新規創業するパターン。創業して1年から2年以内に倒産する確率が高いわけですから、1期目が終わってこれからどうしていくかという局面のシミュレーションです。
それから今回挙げた事業再構築のような、事業モデルをこれから変えるという時の10年単位でのシミュレーション。そして再生事業ですね。黒字化していくための指導と、融資を全額返済するためのビジネスモデルの変換です。これは経営者、社員の意識を含めて、企業が大幅転換しない限り実現できない。後者の方が絶対的に件数が多いので、国としても金融機関としても、それからコンサルタントとしても、取り組まなくてはいけない最大課題だと思っています。

負担の大きい資料作成の手間をMcSSが軽減

田内様:事業再構築に関していえば、企業が今までの状況に慣れてしまい、「銀行も待ってくれるよね」と考えてしまう。だから、一般的には改革が緩いんですね。ところが今回のお客さんは、融資を完済したいというところから始まっているので、そこに向けて計画を作っていく必要がありました。
もし元金を1円も返さなければ、つまり、債務がないのであれば、年間の収支はトントンか少し黒字になっていたんですけど、それでは元金は永遠に返せない。10年間で全額を返済するとしても、利息の他に数千万円の現金を出していかなければならない。現状の体質だと当然それは無理で、事業再構築が必要ですよね。そうなると、やはり10年~15年ぐらいのシミュレーションを作り、企業に示したいわけです。



CRD:現状の将来シミュレーションには、最長10年分のBS/PLが作成できる機能があります。直近期から1年刻みのデータを作り、画面上では10年分を確認できるのですが、PDFは、McSSの開発時にA4用紙1枚に凝縮して出力することを主眼にしていたという背景がありまして、全ての年次の結果は出ない仕様になっています。その点が課題になっているということですね。
ちなみに、画面上のデータから10年分のExcelを出力することは可能です。McSSの画面の?マークをクリックした、『決算データ入力シート』の中に、予測BS/PLの入力用Excelシートがありますので、データを画面からコピーしてこちらのシートに貼り付けていただくことも可能です。


田内様:こうすればよかったんですね。別紙資料添付ということで、使ってみたいと思います。
またその上で、銀行が求めてくるのが、決算書というよりは、試算表で出てくる情報ベースなんですよ。例えば、交通費がいくらだとか、そういったデータの提出を求められるんです。



CRD:売上原価の明細とか、販管費の明細をということですね。開発案としては検討した経緯があるのですが、実装するには至りませんでした。


田内様:企業再生支援機構(現:地域経済活性化支援機構)ですとか、ああいったところで、このような資料を提出してくださいという指示があるじゃないですか。その内容を将来シミュレーションで打ち出せると、McSSで再生計画書が作成できることになる。そうなると断然利用価値が上がりますね。診断士にとってそういった資料を作る負担はかなり大きいので。



CRD:そういった情報が出ると、なお良しですね。


田内様:認定支援機関も、財務デューデリジェンスの項目があると思うんですね。あれも結局、元データは同じじゃないですか。なので、McSSでも協議会で出している定型フォームが出てきてくれると、それでもうデューデリができちゃうわけですよね。
中小企業活性化協議会は、結局あの資料を作成されるまでにものすごい時間をかけている。中小企業診断士の方々も、必ずしも財務に長けているわけではないので、積極的には引き受けないんですよね。会計士だとイメージがスッと湧くみたいですけど、税理士はそうでもない。協議会の中にも財務デューデリができる人とできない人がいるんだなと、業務の中で感じました。McSSで得られる情報、アウトプットの中で、支援側では作るのが面倒だと思っているものは大いにありそうです。

融資の回収に意識が向きがちな銀行には完済計画をデータで示し、設備投資資金を確保することに成功

田内様:先ほどの例に戻りますと、借入金を返すという前提でシミュレーションしていくわけですけれど、1つのシナリオだけでは不十分で。今回も4パターンの再生計画を考えて、経営者と条件を調整していったのですが、それぞれのパターンでランクと偏差値が変わりますよね。うまくいっていると思っても、返済が急激に増えて資金がなくなって、ランクがガタッと落ちたとかね。そういうものを見ながら計画に修正をかけていったんです。これがすごく役に立ちましたね。



CRD:返済が最優先ではありますけど、ある程度キャッシュをキープしておかないと、かえって倒産のリスクが高まりますという、そのバランスを取るのに、というところですね。


田内様:銀行には、「15年先なんてわかりません」って最初は言われていたんですよ。ですが、「15年でお金を返す計画を立てているので、ちゃんと見てください」と。計画の10年目あたりから、元金を返済できるような計画になっていくわけなんですけれど、「本当にそんなことができるんですか」という反応で。そのときにMcSSの資料を見せて理解してもらって。「我々が理想とするパターンだったら、こういう風に推移していきますので、元金も全て完済できます」「銀行さんがおっしゃるような厳しい条件ですと、5年後に返済を一気に始めて、資金ショートになって倒産します」と。そういう説明に、銀行も納得してくれたんですね。



CRD:そうだったのですね。


田内様:銀行からの質問も「前倒しで利益が出た時にはちゃんと返してくれますか」というような内容でしたね。そこで、「返せるものは返します、ただその間に新たな設備投資をすることになったとしても、まだ元金を返済していないわけであり、銀行さんは新たにお金を貸してくれないでしょうから、内部留保で設備投資をします」と。具体的には毎年500万円から1000万円くらい、設備投資のための数字を計画の中にあらかじめ入れておいて、残ったお金、つまり税引き前利益と減価償却費の繰戻金額の7割を返済していきます。計画よりも数字が良かった場合は前倒しで返しますが、設備投資計画の分は先に使いますと。そう説明をしたところ銀行も、「最終的に返してくれるならいいですよ」と。
今までは、未来に設備投資をします、そのためにお金を先に使いますというようなコミットメントなんて取れなかったんです。でも、今回それを勝ち取れたんですよ。その会社は絶対に立て直せると思っています。



CRD:素晴らしいです。


田内様:銀行は結局、将来にわたりどうやって返済するかという点に意識が向いているんですよね。貸借対照表の将来の数字を見たいわけじゃないですか。で、そのデータを強く求められる。ここに将来シミュレーションをうまく使えるといいなと思っています。



CRD:企業再生の実務経験に基づいて将来シミュレーションをどう活用していくか、あるいは、どう改善していけばいいかというお話をいただいて、大変勉強になりました。本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

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